教皇のワイン

シャトーヌフ=デュ=パプ

ボダナートです。

前回、AOC (原産地呼称統制法)について投稿しましたが、フランスにシャトーヌフ=デュ=パプという AOC のワイン産地があります。

場所はフランス南東部、ローヌ地方の南側、2000人程の人が住む小さな村です。

この村の名前がシャトーヌフ=デュ=パプと言うのですが、シャトーは城、ヌフは新しい、デュは英語でいう Of、パプは教皇。

訳すると「教皇の新しい城」という村名になります。

なんだか変な名前の村ですよね?

囚われの教皇

シャトーヌフ=デュ=パプの名前の由来を知るには、カトリックの教皇について知る必要があります。

ローマ帝国とキリスト教はローマ帝国が先に出来たので、皇帝の方が権力は上のハズなのですが、

キリスト教の普及とともに、教皇が皇帝を任命するほど、教皇の力が強くなっていきました。

ところが 1303年に事件が起こります。

フランス国内の教会に税金をかけた事が原因でフランス王が教皇から破門されてしまいます。

怒ったフランス王は、あろうことか、時の教皇を襲って捕らえてしまったのです。

事件以降、教会に対して強い影響力を持ったフランス王はフランス出身の枢機卿から教皇を選出します。

そして教皇をイタリアではなくフランスに住まわせ、教皇庁もローマからフランスのアヴィニョンに移してしまったのです。

教会とワイン

イエス・キリストは、このパンは私の体、このワインは私の血である、と言って弟子たちに食べさせました。

キリスト教の教会では、今でもパンとワインをいただく儀式があります。

キリスト教とワインは切っても切れない関係なのです。

そして、キリスト教が世界に普及していくにつれて、ワインの産地も世界中に拡がっていきました。

ちなみに、フランス産の有名なシャンパン、ドン・ペリニヨンって聞いたことはありますよね?

実は、その名の由来はシャンパンを完成させたキリスト教の修道士の名前なのです。

フランスに移されてしまった教皇庁はフランスでワイン造りを始めます。

教皇のワイン

1316年に新たに教皇となったヨハネス22世はアヴィニョン近隣の地にブドウ畑を開墾しました。

囚われの身とは言え、教皇が口にするワインを作る畑です。

各地からその道の達人が集められ、素晴らしいブドウ畑が出来上がりました。

そして最後に、その畑の中に城を建設しました。

そう、「教皇の新しい城」の完成です。

シャトーヌフ=デュ=パプが出来てから700年、周辺の畑で採れるブドウからは良質のワインが造られ続けました。

近年では世界的に有名なワイン評論家が100点を付ける程の素晴らしいワインが造られています。

世の中にはブルゴーニュのヴォーヌ・ロマネ村とか、ボルドーの1級シャトーとか、

毎年何十万もするワインを生産するところもありますが、

シャトーヌフ=デュ=パプは比較的控え目な値段のワインが多いと思います。

街中のワイン専門店でも稀に見かけるかどうかという珍しいワインですが、

見かけたら是非手に取ってみてはどうでしょうか。

教皇のワイン、一度は飲んでみたいですよね?

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