トゥモロウはイエスタデイの竜巻の後。

年始に親類が鬼籍に入りました。
この親類は口が悪く自由気ままで活発で、食べ物についても好き嫌いが激しく、
とにかくひたすら豪胆で我が道を行くと言うひととなりでした。
しかし欠点は多くとも性格が悪いタイプではなく、
またとてもよく笑う人で憎めないタイプと言いますか。
おかげで葬式の時も「疲れて寝たんだろう」という感覚でした。

その親類には口癖がありまして。
「明日は明日の風が吹く」といつも笑いながら言っていました。
この言葉は励ましや鼓舞だとする説明があります。
原典は河竹黙阿弥による歌舞伎『上総綿小紋単地』での上総市兵衛の台詞、らしい。
らしいと言うのはこの演目は人気が無いのか資料が出てこないからです。
演目の考察資料や元となった事件の資料などもある為大まかな話は分かっており、
そこから解釈するに確かにポジティブな色合いが濃い台詞なのだろうと思います。
尤も、親類が知っている理由はとある映画の和訳からだったのだろうと思いますが。

昔、私はこの台詞をすごく楽観的なものと思っていたのですが(親類の口調から)。
上記演目では主人公はかなりの覚悟の上苦労を背負い込んで結果を勝ち取ったようです。
覚悟の無いポジティブだとすれば「なんて軽い」と思うところですが、
これを知って以来、「思い煩っても意味が無い」という一般的な説明も
少し合わないなと思うようになりました。
進め! って感じでしょうか。

何故この言葉の話をしているのかと言いますと──
親類、衰弱していてもこの台詞を口に出しましてね。
世界の事件出来事政治金融も大事ですが、身近な人間からショックを受けたのは久しぶりだったので。
あなたは役者か、と。

悲しいというよりも残念と言う気持ちが強いのはこれが理由かもしれません。
これくらい肝が据わった人間になりたいなと思わされました。

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